彼女の名前は「ラナ」
5年生、バークラスの女の子
先天的なものなのか、後天的なものなのか
分からないけど
彼女は、手が自由に動かせない。
右手も左手も、ずっと痙攣したような動きをしている。
知的にも少し遅れがあるのかな、うまく話せない。
だけど、いつも周りには友達がいて、
楽しそうに遊んでいる。
周りの子たちもまた、彼女が困ったときには、
何気なく自然に手を差し伸べてる。
―――そういう姿があった。
去年から彼女を見ている。
だけど、彼女が絵を描いているところを見たことがなかった。
―――放課後
バナナを持って、彼女に近づいた。
「描きたい絵があるんやけど、日本人やし、分からへんねん。手伝ってくれる?」
「私、描けないよ」と言いつつも、
にこにこしながらついてきてくれた。
空部屋で、友達の見守る中、
紙の上で、線のスタート地点から、ゴール地点までゆっくり指でなぞった。
彼女はそれを見て、覚え、
両手で鉛筆をにぎって、動かした。
―――友達は紙が動かないように支えてくれた。
40分かけて、1枚の絵が出来上がった。
【モスク】
下の◇は、ラナ一人で描いた。
40分かけて一人で描いた。
この学校に特別支援教育なんてない。
美術の時間、彼女はいつも友達の絵を見てるだけだった。
けど、「一番好きな授業は何?」って聞くと、
いつもにこにこしながら
「ラスム(美術)」と答えてくれた。
この学校にきて、一番好きな作品かも。
(―――あ、バナナはただの囮(オトリ)です。)
帰り道、
「今日、生まれて初めて絵描いた」
って言ってた。
デビュー作に出逢えるなんて滅多にない。
なんか嬉しかったねん。
ラナの2作目も楽しみです。
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